ワイン葡萄の栽培専門書
ワイン葡萄の栽培専門書を探すべく、本屋さんやインターネットで調べましたが、ワイン用の栽培専門書は全く存在しませんでした。
「果樹栽培の基礎」「ブドウの作業便利帳」といった本はありますが、あくまで生食用(食べる葡萄)の栽培について記載されています。
葡萄であることは変わりませんので、基本を学ぶという点では参考になりました。
海外では、ワイン葡萄の栽培に関する書籍は山ほどあるようです。
おそらく、日本のワイン葡萄の栽培方法は、フランス等の海外の栽培方法を取り入れており、日本のワイン葡萄の栽培の歴史が浅いというのが実態なのでしょう。
しかしながら、雨が多く高温多湿の日本において、フランス等の栽培方法をそのまま取り入れることはできず、例えば、レインカットを導入したり、畝を高畝にしたり、堆肥の方法ひとつをとっても違うと思います。
近年、日本ワインの品質が高まり、海外でも賞を取るようになった背景には、ワイナリーや農家さんが、それぞれの地域にあった栽培方法を獲得したことが想像され、今後、日本ワイン全体のレベルを上げる意味でも、ぜひ開示していただきたいです。
行政が開示
インターネットで探しているうちに、これにだどり着きました。
”醸造用ぶどう導入の手引”
北海道農政部が開示しています。

年間を通した作業内容、そして、苗木の植え付け方法、土壌管理、仕立て方法、芽かき・誘引などの栽培管理、病害虫対策まで全ての工程を網羅されているように思います。
10a(1,000㎡)あたりの収支や、栽培時期に応じた労働時間まで示されており、新規就農を志す者にとっては、イメージしやすくありがたいです!
仕立方法
そして、特に仕立方法について、新技術情報が開示されていました。
北海道の栽培方法は、海外の多くがそうであるように垣根栽培が普通です。
北海道においては、樹間の栽植距離は1.5〜2mがこれまで普通でした。
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樹間部分の枝が約2mと長いことによって、春の芽吹き時期に寒さにより栄養がいきわたらず、芽が枯死したり、その再生に時間を要したりしたそうです。
そこで、樹間を1m程度に短くすることで、メリットを多く享受できることが分かったようです。
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樹間が長い場合の課題を解決するとともに、樹間を短くすることによって、新梢当たりの果房数が多くなり収量が向上したそうです。
デメリットとしては、苗木数が倍になることで、苗の確保や定植時の人件費など初期投資が多くなるとともに、樹間の草刈りも手間が多くなることです。
一方、樹勢が強い品種について、長梢整枝(ギヨ・サンプル)を選択する方が増えているそうですが、北海道では今まで短梢整枝(コルドン)が行われてきたため、まだ、比較できる段階ではないとの事です。
葡萄品種ごとの状況(収穫時期等)
栽培方法だけではなく、葡萄品種ごとの収穫時期や北海道での栽培面積、全国シェアなども示されています。
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北海道での栽培面積が広いほど、寒冷地に適した品種であることが分かります。
そして、今まで栽培が難しいと言われてきたリースリングなども栽培されていることには驚きました。
素人にとって、収穫時期の違いなども分かり、この資料はとても参考になります。
詳細はこちらの北海道農政部のホームページをご参照ください。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsk/kajyu/tebiki.htm
苗木屋さんの解説書
苗木屋さんが農家さん向けに作られた解説書も参考になります。

”ブドウ品種解説”
(株)植原葡萄研究所によって作られています。
同社に300円送金すれば購入できます。
葡萄の品種のみならず、台木の特性についても詳細に記されています。
葡萄は接木が必要であり、寒さに強い台木にするか、乾燥に強い台木にするかなど、台木をどれにするかも重要な選択になります。
また、年間を通しての、病害中の防除方法が記載されており、注意事項まで詳細に書かれてますので大変参考になります。
まとめ
”醸造用ぶどう導入の手引”は、北海道がワインに力を入れていることが分かりますね。
北海道のような雨の少ない寒冷地に限られるかもしれませんが、この開示により、他の地域でも参考にすることはできると思います。
私自身としては、これまで、無肥料・無農薬の栽培等について研究「自然農法でワイン用葡萄の栽培が可能?」してきましたが、今後は、基本を覚えるべく、ワインブドウの栽培方法について学んでいきます。
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